ご挨拶

 日工組社会安全研究財団は、昭和62年8月に発足して以来、「我が国の人々が犯罪と無縁でいられる安全で安心な社会を創るための研究及び事業を振興し、公共の安全と秩序の維持に寄与する」ことを目的として、広範な事業を行ってまいりました。

 我が国の犯罪情勢を顧みますと、刑法犯認知件数は平成8年から毎年増加し、平成14年に戦後最多の285万件を記録した後、毎年減少を記録し、平成26年には121万件にまで減少しています。これは、戦後最少であった昭和48年の119万件に匹敵する数字です。

 この刑法犯認知件数の減少は、政府による各種の新たな犯罪対策立法、警察等治安関係機関、刑務所・少年院等矯正保護機関の対応の強化、そして国民各層の犯罪抑止のための各種活動の活発化の成果であると考えられます。また、犯罪被害者支援も格段に充実されてきています。この分野でも国民のボランティア活動は活発化してきています。

 しかしながら、我々は現状をもってよしとするわけにはまいりません。以上に述べた認知件数の減少の多くを窃盗犯が占めており、今日、尚、国民の心胆を寒からしめる凶悪事件の発生等の憂慮すべき状況が続いているからです。また、ストーカー事案、配偶者からの暴力事案、児童虐待なども増加傾向にあるばかりか、これらの事案が深刻な被害をもたらす事例が後を絶ちません。

犯罪は、社会の変化に伴って、その形態を変えていきます。現在の振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺の横行は、高齢化社会への進展に伴う事案として顕著な例であると認められますし、そのほかにも   ○ スマートフォン等携帯電話の普及に伴う少年の福祉を害する犯罪の横行   ○ インターネットが社会基盤として定着したことに伴うサイバー犯罪の深刻化   ○ 国際テロの発生の恐れの深刻化   ○ 経済・金融のグローバル化の進展や情報通信技術の発達を背景とした組織犯罪の増加 などが挙げられます。

 平成32年にオリンピック・パラリンピック東京大会が開催されることを踏まえて、政府は「世界一安全な日本」創造戦略を平成25年12月10日に閣議決定しています。そこには官民挙げて行うべき施策が山積しています。

当財団も、微力ではありますが、犯罪と関わりのない安全・安心な社会を実現するため、今後も努力を重ねてまいる所存でございます。

公益財団法人 日工組社会安全研究財団 会長  伊藤 滋